アメリカ人学者のロバート・トリヴァースという人物はご存知でしょうか？今年の初め、ある雑誌の記事で彼の科学的研究が初めて取り上げられた際、彼の経歴や専門について調べた人が何人かいました。
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アメリカ人学者のロバート・トリヴァースという人物はご存知でしょうか？今年の初め、ある雑誌の記事で彼の科学的研究が初めて取り上げられた際、彼の経歴や専門について調べた人が何人かいました。トリヴァースは進化生物学者であり、ウイルスからセイウチまで、あらゆる生命体における自己欺瞞のメカニズムの研究について、そのキャリアの大半を費やしてきた人物です。そんなトリヴァースの自伝『Wild Life: Adventures of an Evolutionary Biologist』の中で、彼はコンコルドの誤謬を説く際に、定番カジノゲームである「ポーカー」を引き合いに出していたのです。
ポーカープレイヤーの方であれば、欺瞞やごまかしがポーカーの試合においてどれほど重要であるかはお分かりでしょう。気になった筆者は、彼の同自伝を読んでみることにしました。色んな意味で重みのある本であったので、読み終えるのにかなりの時間がかかりましたが、とても興味深い内容で、優れたアイデアがたくさん詰まっているなと感じました。そこで今回は、なぜポーカーが生物学と関連しているのかについて、トリヴァースの研究内容を含めながら紹介していきたいと思います。
トリヴァースは「嘘をつくことは精神的な負担になるおそれがある」と述べています。例えば、ABCポーカーでは、自分がすることはすべて相手にとっても意味があり、そしてそれは自分にとっても意味があるのと同じです。もし自分がブラフをしてしまうと、一貫性があって、もっともらしい物語をゼロから作り上げなければなりません。と同時に、相手が自分の奇想天外な物語を信じるかどうかも、しっかりと見極めなければなりません。これは間違いなく、精神的にかなりの負担になります。
“認知的負荷”などといったシャレた言葉で定義しなくてもいいかもしれませんが、ほぼすべてのポーカープレイヤーがすぐにこのような経験をすることになるでしょう。ここで注目したい一番のポイントは、「プレイヤーは何か他のことに夢中になっている間はブラフが少なくなる」という点です。言い換えれば、何か他のことをしながらプレイを続けている人は、そうでない人と比較すると、価値あるベットとブラフの比率がはるかに高くなるということが分かります。
トリヴァースは自伝の中で、パッションフラワーのつる植物とヘリコニウス蝶の戦いを述べています。蝶はつる植物の葉に卵を産みつけ、孵化した幼虫がその葉を食い荒らすことを好みます。結果的に、つる植物に害を及ぼしてしまうのです。つる植物の葉にはもともと黄色い点が左右対称についているのですが、これがヘリコニウス蝶の卵に似ているうえ、彼らはその卵をランダムに産み落とすのです。
他方、ポーカーにおいても、ランダム性は効果的なアプローチとなります。もちろん、すべての選択に絶対的なランダム性を持たせてしまうと、混沌として、賢いやり口ではなく、長い目で見ればきっと勝利には繋がらないでしょう。しかし、自然な形で予測不可能なランダム性を盛り込むことで、対戦相手が自分のベッティングからホールカードを特定することがより困難になるのです。
寄生虫とは、他の生物に寄生し、その生物の栄養に依存する生物のことです。そんな寄生虫がポーカーにどのように適用できるかですが、戦術的な問題というより、哲学的な問題です。ポーカーを仕事にしている人の大半は、「自分は社会に貢献していない」「世界をより良い場所にするために貢献していない」といったネガティブな考えと闘っていますが、実際、ポーカーで生計を立てる人は富を生み出すのではなく、他人の富を奪っているのです。ある意味、この行為は寄生虫の生き方と似ていて、宿主が食べたものを食べるサナダ虫のようなものです。ポーカープレイヤーが抱えるこのような不安は、決していい影響を与えることはありませんが、その影響の度合いは人によって異なります。
